最終更新日 2025年7月9日
産業医とは?
社会人として働いている人であれば、産業医の存在を把握している人もいるのではないでしょうか。
しかし、実際にどういった役割を果たしているのかを正確に理解している人は少ないと言われています。
その歴史は軍医からはじまると言われており、兵士の病態を見て戦線に復帰ができるのかそれとも帰すべきなのかを判断するのです。
終戦後、海外から帰国する兵士が多い中で彼らは結核を抱えながら工場などで働いていました。
罹患者が一人でもいると広く蔓延し生産効率も低下してしまうため、これを防止するためにも政府は保健に関する知識を有した医師を派遣するようになりました。
これにより、医師が事業場を訪問したりあるいは常駐し労働者の健康管理に関する助言や指導を担うようになったのです。
その後大気汚染などを原因として労働者の健康が害されるケースが多くなったことを受けて、1972年に労働安全衛生法が制定されました。
1996年に脳や心臓疾患などを持つ労働者が増加し、仕事だけでなく家庭でもストレスを感じる人が多くなったことを背景に、メンタルヘルスに関する研修を受けたものや健康管理に必要な知識を有した人物のみが産業医として認定されると法律が改正されたのです。
産業医になるための方法
産業医になるための方法は様々あります。
まず、日本医師会の研修を受けることです。
研修は単位ごとに定められていて、一定の単位数以上を修了すれば認定されます。
講座を受けて、認定を受けるケースもあります。
この講座は毎年開催されていて、実践的な講義やグループ演習などが行われ2か月にわたって行われるのです。
このように研修を通じて認定を受けるだけではなく、労働衛生コンサルタントの資格を取得するという方法も挙げられます。
試験内容は筆記と口述試験で、択一だけでなく記述も課されるため用語などを暗記するだけでは合格することは難しいと言われています。
保健師や衛生管理者などとともに事業場内産業保健スタッフと呼ばれており、職場での労働者の健康管理を担っています。
事実、近年働く場所ではパワハラやセクハラなどを原因として労働者のメンタルヘルス不調が問題視されており、企業はリスクマネジメントの一環として身体面のみならず精神面での健康管理が求められるようになりました。
産業医の実際の仕事内容
このような中で産業医が果たす役割は非常に重要になってきているのですが、主に健康相談や面接指導を行います。
面接指導というのはストレスチェックの結果を基にメンタルヘルス不調の早期発見や対応を目的に行われるもので、医療の専門家として労働者の症状を評価し健康を維持できるように配慮し助言する立場にあります。
このため労働者の健康を守るためには、労働者の意に反した意見をすることもあるのです。
また、休職していた労働者の復職について、主治医と意見交換をし、労働者の疾病の状況や業務遂行能力に応じ、就業上必要な配慮や職務内容、環境改善の提案など社内制度に基づいたアドバイスを実施します。
その他にも、職場巡視やメンタルヘルス不調が疑われる労働者が専門医を受診すべきかを評価する役割も担っています。
なお、通常は診断や治療は主治医の役割であるため医師とは言っても治療や診断は行いません。
労働安全衛生法ではに基づき、職場における労働者数に応じて選任義務が定められています。
具体的には、労働者が常時50人以上いる場合は選任しなければならず常時1,000人以上の職場では専属医を選任する必要があります。
それ以下の場合では、嘱託で月に1度職場を訪問することになっており法令に基づき一定の要件を備えていることが必要で、要件を満たすために終了する研修にはメンタルヘルスに関する項目も含まれているのです。
まとめ
私も職場環境に悩んだことで精神的な病になり、3か月間休職をしたことがあります。
それ以前に職場で産業医と面談をしたりして対応をしてもらっていたのですが、どうしても我慢ができず病んでしまったのです。
休職中は主治医と産業医が連携を取り、職場復帰支援を行ってくれたこともあり無事復帰することができ円滑に就業できました。
休職中は私のように精神的な病で休職をしている人がどれくらいいるのだろうかと調べてみたところ、決して少なくないことが分かり職場環境改善が叫ばれているとはいえ、おそらく今後も増加することと考えます。
職場の人数によっては選任義務のないところもあるため、場合によっては職場内に存在しないこともあります。
そうなると、メンタルヘルス不調者への対応が疎かになってしまうではないかと考える人もいるかもしれませんが、そのような場合には公的や行政機関さらには民間などの事業場外資源を積極的に活用することをおすすめします。
上手くストレスなどに対応をして、長く働ける職場づくりをしていくのも労働者に求められる役割と言えるでしょう。
そのため、労働者自身も健康管理に関する知識を身につける必要があると考えます。